俺と弟は部屋の整理をしていた。
「これどうする?」
別々に部屋を持たせてもらえることになったのである。
「そうだな」
弟が本棚とその前に積まれたマンガの単行本を指差した。
「ブックオフとかでよくないか?」
「うん。どれを誰が買ったか分からないのがあるもんね。お金は折半でいい?」
「ああ。ゲーム機とソフトはどうする?」
今では機種が古くなっているゲーム機三台と、そのソフトが液晶テレビの前に散乱している。
「これも処分でいいんじゃない?」
「わかった」
CDとDVDは殆どレンタルだし、音楽自体はアイポッドの中だ。パソコンはそれぞれがノートを所有している。後は教科書や文房具、衣服を移動すればいいだけだった。
こうしてみると個人的な持ち物が驚くほど少ないのに気付く。
「いつ引越すって言ってた?」
「さあ。母さんは実家に戻るから、どうとでもなるだろ。そっちは?」
「社員寮に入れてもらえるって。大企業で万歳だよね」
離婚協議で家屋と土地は売却し、等分に分けることになっていた。
「双子を産んで良かったって母さんが言ってたよ」
「どうして?」
「どっちも男だから父さんと争わずに済むって。どっちかが女の子だったりしたら大変だってさ」
俺は頷く。
「父さんも母さんも長男長女だもんな。どっちも家も男の子供を欲しがるわけだ」
「勝手だよね」
「大人の勝手に振り回されるのが子供という稼業の辛いところだ」
弟の頭を軽く叩いてやった。もう今までのようには、この『鏡の国のぼく三次元バージョン』を目にする事はない。
重荷から解かれた思いで俺は心の底から安堵していた。